星街すいせいの歌う「ムーンライト」。思い浮かぶのは誰もが寝静まった夜。ほのかな月明かりを浴びながら逃避行をしているような、そんなイメージだ。清らかだけど、危うい感じでもある。この歌には、息苦しい現実を忘れさせてくれる不思議な世界観があった。
「ムーンライト」感想
歌のテーマ
「ムーンライト」のテーマとして、
- 開放的
- 現実逃避
- 誰にも流されない私
- 小さな幸せ
といったものが思い浮かぶ。
現実を抜け出して自由になりたい!みたいな気持ちが伝わってくる歌詞が、全体的に多い。この歌の主人公「私」には現実逃避欲なるものがあるのだろうか。
「私」はやることや考えることが山ほどある息苦しい現実から抜け出し、たまには息抜きをしたいと考えているのかもしれない。
似た者同士の「あなた」
そして、「私」にとって大きな存在である「あなた」「似た者同士だけど分かり合えない部分」もあるらしい。一体どういう部分が分かり合えないと思っているのだろう。
歌の中で「私」は何度も「あなた」に誘いをかけている。息苦しくつまらない現実から一緒に抜け出そうと言っているのだろう。
ここで曲の冒頭と最後のパートに注目する。
〈冒頭〉
誰かにとっての普通をしよう
〈最後〉
私にとっての普通でいよう
出典:星街すいせい「ムーンライト」(作詞・作曲:なとり/2024)より
全く同じフレーズかと思いきや、一行だけ少し変わっているところがある。この微妙な変化からこう解釈してみた。
「私」には、周りに流されない自分でありたいという思いがある。自分軸をしっかり持って生きていきたい、という気持ちだ。そして「あなた」にもそうあってほしいと願っている。
「私」も「あなた」も、普段は周りと合わせながら生きていて、ありのままの自分でいることができないのかもしれない。
社会に出れば必ず他人に合わせなければならない場面というのはあるが、それを窮屈に感じてしまうことも多い。
そんな現実に「私」は嫌気がさしているけれど、「あなた」は仕方ないことだと諦めているのだろうか。ありのままでいる必要はないと思っており、「私」に対しても本音を見せないで合わせるような態度を取ってくるのかもしれない。
小さな幸せ
あくまで私の想像だが、「私」は「あなた」のことをこう思っている。周りに気を遣いながら生きているところは自分に似ているけれど、本音をぶつけてはくれず、自由奔放でいたいという気持ちには共感してくれなくてモヤモヤするな…と。
遠くまで歩こうよ、裸足で
小さな幸せを見つけて
出典:星街すいせい「ムーンライト」(作詞・作曲:なとり/2024)より
だけど「私」は「あなた」との”小さな幸せ”を夢見ている。同じ痛みが分かる同志だからこそ「あなた」のことが気になるし、いつか心から語り合えるような仲になりたいと願っているのだと思う。
「ムーンライト」を聴いて非現実に浸ろう
”月明かりの下の逃避行”という静けさの中にもちょっとドキドキするような世界観があった、星街すいせいの「ムーンライト」。「私」と「あなた」の関係性に目を向けて、周りと合わせることの窮屈さやそこから抜け出したい気持ちなんかを読み解いてきた。この曲を聴けば、現実に息苦しさを感じていたとしてもまるで空を飛ぶような解放感が味わえる。今日は非現実に浸りたい…なんてときに、おすすめな曲かもしれない。