進みたくて進めなくて。あいみょん「ざらめ」

感想系
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2024年夏ドラマ「降り積もれ孤独な死よ」の主題歌は、あいみょんが歌う「ざらめ」。

ドラマの登場人物の心情に寄り添っているような歌詞が印象的な曲だが、自分なりに解釈してみた。

「ざらめ」を聴いて感じたこと

歌のテーマ

歌のテーマとしては、次のようなものが思い浮かぶ。

  • 精神的な苦しみ
  • トラウマと闘う
  • 生きることの難しさ
  • 苦しみの中でも諦めない

「親から受けた理不尽な虐待」に苦しむ登場人物が描かれているドラマに合わせて、主題歌でも暗くて重いテーマを歌っている。

ドラマ公式ホームページより、作詞作曲したあいみょんは曲についてこう語っている。

私なりの寄り添い方で、最後には希望が少しでも灯ればと思ってます。

出典:主題歌|降り積もれ孤独な死よ|読売テレビ・日本テレビ系

全体的に暗い雰囲気の歌詞が多いが、前向きなワードも所々出てくる。冒頭で心にできた傷のことを「無名の刃」が刺さっていると言っているが、歌の最後でそれが「鉛の屑」へと変化した。つまり”刃”、心の傷は曲の最後では癒え始めていると考えることもできる。

「消えないで…」印象的なサビ

この歌の印象に残る部分といえば、サビで繰り返される「消えないで」だろうか。このサビ部分、私には何かを祈っているような響きに聴こえる。

一体何に対して「消えないで」と祈っているのだろう。私は、自分自身に対してだと思う。現状がうまくいかず心がつらいとき。プレッシャーや悲しみ、虚しさなどネガティブな感情で押しつぶされそうになる経験をしたことのある人は、多いだろう。

そんな時は、まるで自分の身体が消え入りそうな感覚に陥る。必死で自分を保とうとするが故に、自分自身に向かって「自分よ、消えないで」と叫んでいるように聞こえてしまうのだ。また、諦めてしまいそうな自分を必死で引きとめているようでもある。

「変わりたい」や「進みたい」といった前向きなワードも出てくることから、この歌の主人公にはうまくいかない現状を変えたいという気持ちが本当はある。進みたくても進めないという非常に苦しい状況で、主人公がもがきながら生きていることが感じられる。

衝撃的な歌詞「感情を殺せ」

この歌の中で、もう一つインパクトが強かったのがこちらの歌詞。一瞬ドキリとする「殺せ」というワードだが、それだけ印象深くもある。

サビの「消えないで」は、自身の感情に対するものでもあるのではないだろうか。感情を無くせと自分に命令する一方で、感情を押し殺すことでしかやり過ごせない状況を嘆いているのかもしれない。

一番と二番の違い

全体を通して精神的な苦しみを歌っているようだが、一番と二番では少し違いがあるように思う。

まず、一番では過去に受けた傷、つまりトラウマの原因となったことに関して、二番では未だに消えないトラウマと闘う苦しみが描かれているように感じた。

一番では、苦しい状況から抜け出せなかった過去の自分を悔やんでいる。そして、二番の最後ではこのように言っている。

現状を変えるには、過去や傷つけてきた人間ではなく自分自身と闘う必要があるのだと、ここで気付く主人公。今の自分の苦しみの原因は、自分の中にあるからだ。

苦しい状況で、諦めない気持ちを持ち続けることは難しい。何度も上手くいかないことが続いたりすると自信が無くなって、諦めてしまうことも多くなる。この歌のように進みたくても進めないという状況に陥ってしまうこともあるだろう。

苦しみから抜け出すには、自分はできると信じて前に進み続けることが必要だ。最初からできないと諦めていれば同じ苦しみを繰り返すだけだ。自分との闘いとは、諦めないで自身の現状に立ち向かい続けることだと思う。

「鉛の屑」=「ざらめ」?

ところでタイトルの「ざらめ」には、一体どんな意味が込められているのだろうか。

ざらめとは粒々していて固い砂糖のことだが、ここで歌の一番最後、締めの一行に注目してみる。

この”鉛の屑”こそ、ざらめのことではないだろうか。食べたとき舌に残るざらめのように、心に残ったわだかまり、つまり”トラウマ”のことを言っているのではないかと推測した。

心の傷を抱えながらも前に進もうとする曲

人生の中で苦しい時期を過ごすことは、誰だってあるだろう。前を向き続けるのが難しくなり、諦めてしまうこともあるのではないか。私はこの歌を聴いて、たとえ悲しくつらい状況でも希望はわずかにあり、その灯に自らが向かって行かなければならないのだと感じた。希望とは、諦めない気持ちを持ち続けることだと私は思う。「ざらめ」は、心の傷を抱えながらも前に進もうとする人を後押ししてくれる曲だ。

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